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2020 03,19 13:47 |
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〔はじめに〕 「リーダーシップ」という言葉は、ごく自然に使われている。「あの人のリーダーシップはすごい」とかと。また、とりたててその言葉の意味内容に難しさがあるわけでもない。けれども“言うは易く、行うは難し”である。実践場面においてリーダーシップを発揮することがどれほど難しいか。日々われわれはそのことを痛感させられている。 今われわれは福祉の仕事に日々とりくんでおり、直面している困難は数限りない。なかでもこのリーダーシップにかかわる問題は最難関であると言えるかもしれない。例えば、リーダー的地位にある職員でも十分にリーダーシップを発揮できている職員はけっして多いとは言えないし、できることならばリーダーシップをとる必要のない職務にとどめたいと考える職員も存在する。これらの事実にそのことは如実に示されている。 リーダーシップとは何であるのか? いかにしてリーダーシップを発揮するのか? どのようにリーダーを育成していくのか? われわれ自身が所属し・みずからつくりあげている組織の質を高め・とりくみのレベルアップをはかっていくためにどうするのか? あくまでも、このすぐれて実践的な問題として、以下リーダーシップについて考えを深めていきたい。これがこの小稿の主旨である。 〔Ⅰ〕リーダーシップとは? まず、リーダーシップとは何かということにかんしては、さまざまな人物がいろいろに定義している。 <ⅰ>「リーダーシップとは、組織●の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立する■ことである。リーダーとは目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する■者である。」(ドラッガー『プロフェッショナルの条件』) <ⅱ>リーダーシップとは、「ビジョン◎を明確にして組織●の力を最大化し、目標達成■に向けて成果を出していく▲能力。」 <ⅲ>「リーダーシップとは…組織を率いる能力…目標■を設定して組織をその方向へ導いていく●能力。」 <ⅳ>「リーダーシップとは、一定の目標◎を達成するために、個人あるいは集団をその方向に行動づけるための影響力の行使◎。」 <ⅴ>「共通の仕事や課題を達成するために、他人の協力を得る◎ことができる社会的な影響力◎。」 <ⅵ>「リーダーシップとは信頼感で部下を動かして◎、目標■を達成する行動である。」 <ⅶ>「(リーダーシップとは)ついてくるひとがいること◎。」(金井壽宏『リーダーシップ入門』) 〔註1〕 〔Ⅱ〕キー概念 上記の諸規定を参照してわれわれなりの規定を導いていこう。そのうえで必須不可欠な概念がある。<目標><実践><組織><関係>である。 (1) まずもって第一に確認すべきは、「 ■印 」にみられるように、われわれが<目標>をもってことにのぞむということ、また「 ▲印 」つまりこの<目標>を実現していくために<実践>するという点にある。リーダーシップとは、まずは実践にかかわる概念である。リーダーシップの発揮そのものが実践であるという意味においても、またこのリーダーシップの発揮を通じて目標を有効に実現するための実践をくりひろげていくのだという意味においても。 (2) では、その実践は個々人が個々にくりひろげるそれを指すのかと言えば、そうではない。「 ●印 」にあるように<組織>の実践にかかわることである。組織実践において発揮されるものがリーダーシップであるということが第二に確認したいことがらである。べつに定款もあり組織形態もしっかりした組織だけを念頭におく必要はない。集団とかグループとかを想定してかまわない。組織と表現する場合でも、協働作業をする現場のチームにおいても問題となるし、法人レベルの組織づくりにおいても問題となる。 (3) また、組織といっても、当然のことながら、この組織における担い手と担い手との関係という要素もある。このことを第三に確認したい。「 ◎印 」にあるように、組織のなかである者がリーダーシップを発揮して他の者も行動するという<関係>があり、そのなかでリーダーシップは発揮されるということをおさえよう。リーダーシップとは関係概念である。 このようにとらえると、リーダーシップとは、[組織なり・集団なり・グループなりにおいて/その目的・目標を実現する実践において、それを実現するために/ある担い手が他の担い手とのあいだで発揮する指導的役割もしくはその能力] と規定して良いと考える。 ここで、「役割」とか「能力」とかと表現した。「…ship」という接尾語は、世の辞書によれば、1「状態・性質」、2「資格・地位・役職」、3「能力・技能」、4「関係」、5「集団・層」、6「性質・状態を具体化したもの」、7「…の地位・資格をもった人」という意味内容を指すとのことなので、上記の規定表現は許容されるのではないかと思われる。また、ここで4「関係」とされていることは注目されるべきことであり、上述(3)の主張の妥当性が示されている。 〔Ⅲ〕リーダーシップ論の歴史的推移 さて、こうしたおおづかみな把握を前提として、これまでリーダーシップについて先人たちがどのように論じてきたのかを振りかえっておこう。 リーダーシップ論はおよそ1940年代あたりからアメリカを中心として活発に論議されてきたと言われているが、それは、歴史の進展とともに変化する時どきの時代的・社会的背景によってさまざまな変遷をたどってきた。概括すれば、それは以下のような歴史であったといえる。 (ⅰ) 1940年代の「特性理論」…リーダーは生まれながらにして持っている特性によってリーダーシップを発揮するという基本的な把握にたって、リーダーと非リーダーとの特性の違いを究明する理論。たとえば、大英帝国の歴史家・評論家のトーマス・カーライルは「リーダーシップ偉人説」の中で、「優れた偉人のみがリーダーになることができる」と説いたと伝えられている。 (ⅱ) 1940年代~60年代の「行動理論」…上記の特性理論を否定し、「リーダーシップは天性のものではなく、行動によって発揮される」、リーダーとは初めから持っている素質ではなく、行動によってつくられていくという考え方を打ち出した。〔註2〕 本稿の筆者の理解では、この論説は三点の意義をもっている。①理論タイトル通りリーダーシップを行動=実践における問題として据えたこと。②いかにしてリーダーを育てるのかという実践的アプローチをしていること。③この論を唱える一部の論者が、「課題達成機能」と「人間関係・集団維持機能」という二側面からリーダーシップを定義づけていること。 ここで①のように、それまでのリーダーシップ=生まれながらの特性という把握を否定したことは、意義あることであり、このことによって後天的にリーダーシップを身につけることができるという地に足をつけた究明が可能となった。けれども、先天的か後天的かという究明は多くの科学を動員して深めていく問題であってそれほど単純なものではない。 それはともかくとして、このリーダーシップが後天的に身につくという側面を明確にしたことは意義あることであるし、またそのことによって②のようなアプローチもまた可能となったといえる。第二次対戦後、軍隊においても、経済界においても、政治エリートの世界においても、あらゆる分野でリーダーを育成する現実的必要性が高まったことを背景としてこうした理論が導き出されたともいえる。だがしかし、この②の内容は、優れたリーダーの行動を非リーダーが模倣するという次元に甘んじている。 ③についても、組織・集団・グループにおける「課題」を、そこにおける「人間関係」を通じて実現するという基本的な枠組みがつくりあげられたことは、リーダーシップ論を展開していくための土俵をしつらえたという意義をもっている。しかしながら、その内容はきわめて図式的な内容に堕してしまっている。 (ⅲ) 1960年代~80年代の「条件適合理論」…行動理論の図式主義ともいえる単純さを克服し、リーダーシップの多種のあり方を追究しようとしたのが、「条件適合理論」である。それは、目まぐるしく変化していく時代において、リーダーのあり方を画一的に定義づけすることは不可能であり、逆に「全ての人が、状況によってはリーダーシップを発揮できる」とする理論であった。「課題達成」を据え置く点は行動理論と同様であるとしても、この目標(ゴール)に到着するためにとるべき道筋(パス)としてのリーダーシップを―「内的および外的環境の条件」への適合によって―多様なものとして理解する。およそこのような理論であったと考えられる。〔註3〕 行動理論の単純性をこのようなかたちで複合的に捉えるという意図にそれはもとづいている。とはいえ、ここでも、図式的にリーダー行動の類型が列挙されているにすぎない。 (ⅳ) (ⅲ)と重なる年代のカリスマ的リーダーシップ理論…1970年代以降に打ち出されたもので、上司が部下の指針となるビジョンを掲げ、部下の模範となり、現状を的確に見極め、モチベーションをアップさせるような態度や言動を実行し、従来の形式にとらわれない発想や行動で組織を導く超人的な力を持つリーダーを讃美する理論である。 戦後から1960年代まで続いたアメリカ経済の好調が、70年代に入り安定から緩やかな下降線をたどり、ついに1972年オイルショックによりGDP成長率は低下し、失業率もまた上昇していった。こうした時代状況を背景としてそれは打ち出されたのだといえる。それは、ビジョンを強調したリーダーの強い指導力を強調したという積極的な側面をもちながらも、他面その裏面では「超人的リーダー」なるものをキー概念とすることによってリーダーシップ論の歴史的後退をもたらしという側面ももちあわせている。 (ⅴ) 1980年代~現代の「コンセプト理論」…上記の「条件適合理論」をベースとし、カリスマ的リーダーシップ論におけるビジョンの強調を引き継ぎながらも、超人的リーダーではなく、広く世に存在する上司を部下との関係においてとりあげることをベースとしてビジョンの力を強調した論説がこれであったと言って良い。会社組織における一般的な関係をベースとすることによってリーダーシップのより多種なパターンを研究しようと志したのが「コンセプト理論」であるといえる。それゆえこの理論はそれなりに社会に浸透していった。そしてこの中心に1980年代に大きな潮流となってきた「変革的リーダーシップ論」が位置づく。主にこの理論はビジネス界において研究されてきたものであるが、現在ではスポーツ界などでも小さからぬ脚光を浴びている。とりわけチームスポーツにおいては、そのリーダーのあり方について一石を投じている。例えば、ジャパン・ラグビーにおけるリーダーシップのあり方にたいしても大きな影響を与えてもいる。 この「変革的リーダーシップ論」かんしては、「リーダーシップ論」のジョン・P・コッターと「現状変革型リーダー論」のノール・M・ティシーが代表的である。この論説についてはやや立ち入って以下で検討しておきたい。この論説が、リーダーシップ論の歴史的変遷を集約しており、この理論分野における代表的な地位を占めているからである。 PR |
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