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2020 03,15 13:04 |
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1:研究の背景と目的
高齢化に伴い在宅医療は大きく変化し、在院日数の短縮化が進み、在宅療養に移行する例は多い。そして住み慣れた家で最期を迎えたいと希望する高齢者も増えている。その実現のためには、在宅ケアを充実させること、療養者自身が生命維持の基本となる栄養状態を整え、身体機能の低下を防ぐことが大切である。 疾患だけでなく複雑化した摂食嚥下障害を持つ要介護高齢者は多く、「食べる」ことをあきらめる療養者が多い。人間にとって「食べる」ことに対する思いは生活の質そのものである。延命措置ではなく残された人生をどう生きるかに焦点を当てたリビングウィルが問われている。経口摂食が在宅においても重要な課題になっている。しかし、「食べる」ための在宅ケアチームの「栄養、摂食・嚥下支援」はなかなか進まないのが現状である。 私は「食わせろー」と叫びながら亡くなっていった認知症の療養者と出会って「食支援」への思いが強まった。療養者とその家族に「誤嚥するから食べないで」と医療者側の捉える「誤嚥のリスク」を理由に悩む本人と家族に十分な援助ができない自分がいた。 この研究は、在宅において摂食嚥下機能の低下した療養者の「食べたい」を実現することが困難な理由がどこにあるのかを在宅ケアチームにおいて直接療養者にかかわる立場の訪問看護師、介護福祉士、ケアマネージャーへの面接から明らかにしようとするものである。これからの在宅ケアチームが療養者の「食べたい」をどう支援していくか、食支援の体制をどう構築したらよいかを検討した。 2:研究の方法 食支援の現状を明らかにするために医療職等への調査を実施した。調査の概要は次のとおりである。 (1)調査の目的:在宅の食支援に医療職等がどのようにかかわっているか、他の職種に何を期待しているか等。 (2)調査の方法:医療職等への半構造化面接調査 (3)面接調査の対象の選定と調査数 調査対象の選定に当たっては在宅ケアチームの食支援に直接関係の深い3職種とし、次のような選定基準をもうけた。①医療職として5年以上の訪問看護ステーション管理者の訪問看護師7人、②在宅福祉専門職として10年以上の経験を持つ訪問介護事業所管理者の介護福祉士7人、③10年以上の経験を持つ居宅介護支援事業所管理者のケアマネージャー7人 (4)調査機関:平成30年8月から10月 (5)調査の方法:半構造化面接調査 (6)主な調査項目:栄養、摂食・嚥下障害の療養者に対し、①食支援の状況・知識②多職種連携での情報共有③問題と感じる事④訪問看護師との連携⑤訪問看護師への期待。面接ガイドに沿って自由に語ってもらった。 なお、調査に際して放送大学研究倫理委員会の承認を得た。 3:調査の主な結果と考察 踏査の主な結果は次の3点である。 (1)栄養、摂食・嚥下障害における食支援に対して訪問看護師自身の役割認識が低い。 ①医療職としての予防や治療である吸引や誤嚥性肺炎、疾患の状態観察という意識が高い②低栄養や摂食・嚥下障害の食事介助のスキルやその知識に対して知識不足を感じている③医師の指示に誤嚥の危険があると責任が取れないという発言が多い④本人家族の食べたいという希望に応えきれないジレンマを感じている⑤医師や歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士など多職種と連携して経口摂食を進める事に消極的であるが、専門的な医療情報を得て食支援をする必要性を感じている発言が多い。⑥禁食がオーラルフレイルを悪化させ、誤嚥につながるという認識が十分でない。誤嚥は起こるものであり、それでも食べる事で状態の改善を目指すという新しい経口摂食の知識がない⑦他のケアに時間を割かれ食支援の時間が取れない。情報を共有するための時間も取りにくいと感じている。 (2)3職種からの訪問看護師への役割期待が多いが期待に応えられていない現状がある。 ①療養者の健康の状態を把握している訪問看護師に栄養状態や食事摂食について相談したいができない。②食べることや障害に合った調理の相談をして栄養、摂食・嚥下の問題を共有し、指導を受けたいが十分にできない。③訪問看護師がいつも忙しく、他職種とのコミュニケーションをとる時間が少ない④訪問看護師には役割期待に応えるべき今後の研鑽を望んでいる。⑤訪問介護をしていて、誤嚥のリスク感が低いことで嚥下障害があっても食べたいと強く希望している療養者には食事介助することがよくある。 (3)3職種からの共通な要望は、栄養、摂食・嚥下の機能低下についての情報が訪問看護師から欲しい。 ①病院から訪問看護師への情報共有が少ない。②訪問看護師から福祉職に情報が欲しい。 住み慣れた家でこそ、自分らしい食事がしたいと願うのは、人間本来の欲求であり、「食べる権利」と言える。また、超高齢社会において華麗による嚥下障害は誰しも経験していく問題でもあり、これからの在宅ケアでは「食支援」の重要性は強まると考える。 3職種によるインタビュー調査の結果では、訪問看護師の役割認識と介護福祉士・ケアマネージャーの看護師への役割期待には大きな隔たりがあった。訪問看護師は療養者の食支援を「誤嚥リスク」の理由で直接関わることから遠ざかっていた。そして在宅の「食支援」はケアマネージャーが歯科医や管理栄養士や言語聴覚士をケアプランに位置付けてもうまく定着しないことが多いという意見が圧倒的であった。目の前に食べたいが食べられないと訴える療養者がいてもつながらないことが多いのが現状である。 4:結論 研究当初は在宅における食支援チームの構築が進まない理由が管理栄養士や言語聴覚士などの専門職の不足ではないかと予測していた。しかし調査後は、訪問看護師の担うべき役割が担えていないことが大きな理由ではないかということが浮かびあがってきた。在宅において療養者は生活的、医療的、社会的経済的など複合的な問題を抱えている。療養者の最も近い医療者である訪問介護士の新たな取り組みが求められているのではないか。 調査結果から「食支援」を在宅で薄めるための訪問看護師および関連職種の役割としてあげられることは、次の4点である。 (1)療養者の食べる権利と誤嚥のリスクを主治医と話し合い、療養者の食べたい気持ちに寄り添える意思決定ができるようにかかわる必要がある。 (2)低栄養の評価、食事支援の知識とスキルを高める必要がある。 (3)在宅における療養者の医療的・生活的・社会的な視点にもとづいた食支援の在り方を多職種で情報共有する (4)ケアマネージャーが食支援への意識を高めることで在宅食支援のケアチームの情報共有を進める 食生活における情報共有の不足は大きな問題である。在宅ケアチームが多職種連携のための情報をいかに共有していくのかのカギを握るのは、ケアマネージャーであると考える。訪問看護師が持っている情報はケアマネージャーと共有することで在宅ケアチームの情報共有につながると言える。訪問看護師の新たな役割への取り組みはケアマネージャーとの連携が重要であり、それが「食べたい」を支える食支援体制の構築につながるといっても過言ではない。 5:今後の課題 今後は、在宅における食支援の知識と情報共有について検討していきたいと考える。 ≪参考文献≫ 1)地域における栄養サポートチームの多職種連携と発展要件 柴崎美紀 2016年 これからの超高齢化社会において、さらなる在宅看護の社会的ニーズに高まりがあると思われます。訪問看護ステーションの経営と運営を試みて25年が経とうとしている今、その存在がこれからの高齢化社会において安心できる街作りに繋げることが重要と感じます。この論文を書いて、訪問看護師としての旨のつかえがとれ、迷わず多職種連携を実践していきたいと思います。そして在宅看護のこれからを担っていく訪問看護師が学会発表にも取り組めるような風土を作りたいと思います。論文の執筆は初めてで山田先生より賜りました心のこもったご指導と励ましは私の宝物となりました。心より感謝いたします。 ケアマネ愛あいリハビリ訪問看護ステーション 代表 大村 愛子 PR |
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